認知症の親が、がんの手術を迫られた…症状が悪化するリスクは?
認知症患者に大きい手術を受けさせることは病気を治せても認知症症状悪化のリスクはあるのでしょうか──。介護をするご家族から聞かれることがありますが、当然、一定のリスクはあると思います。
しかし、手術が必要になるような「がん」や「心臓病」は命に関わるものであるケースが多いため、リスクとベネフィットを考慮して実施されます。医療現場としては、回復の可能性があれば手術を勧めますが、高齢である状況から手術ではなく緩和ケアを選ぶケースもあります。手術以外の選択肢がある場合にはそちらを選択することも少なくありません。たとえば食道がんなら、手術ではなく化学療法+放射線治療を選択します。
決断については、本人が医療行為への同意能力が失われている場合、家族から同意を得るのが一般的です。手術で認知症症状が悪化する理由として、麻酔薬の影響が指摘されています。
ただ、論文では「問題ない」とする研究結果と、「認知機能を低下させる」という研究結果があり、結論は出ていません。さらに、麻酔方法(全身麻酔か局所麻酔か)や麻酔薬の種類をはじめ、手術の侵襲度、手術時間、出血量、手術中の低血圧や低酸素、低体温といった別の因子が関連するため、麻酔薬だけにリスクがあると言い切るのも難しい。