「専門医」と「一般医」は何が違う? 医療機関の看板だけではわからない
患者として気になるのは、専門医と一般医とで診療に大きな違いがあるのか、だ。
「一般医の中には、長いキャリアがあり、わざわざ専門医資格を持つ必要はないと考える人もいて、必ずしも専門医資格を持っている医師が優秀であるとは言い切れません。ただし、一般的には専門医資格のある医師は、一般医に比べて『クリニカルイナーシャ(臨床的惰性)』が少ないと言われています」
クリニカルイナーシャとは「治療目的が達成されていないにもかかわらず、治療が適切に強化されていない状態」を指す。その原因は医療者側、患者側、医療システムなどにあり、その項目も多岐にわたる。
たとえば、糖尿病治療においてのクリニカルイナーシャは医療者側からは医療費がアップすることへの懸念、副作用への懸念、患者の管理能力への懸念などであり、患者側からは血糖マネジメントが困難になることへの認識不足、薬が増えることへの懸念、医療費アップへの懸念など。医療システムからはガイドラインの欠如、患者への積極関与の欠如などがある。
「糖尿病におけるクリニカルイナーシャは血糖コントロールが困難な状態を長引かせ、結果的に合併症のリスクを上昇させることで、平均寿命を短くするとされています」 実際、カナダで行われた研究ではHb(ヘモグロビン)A1c値が8%以上である65歳以上の患者において、プライマリーケア医(一般内科医)の診察を受けた1911人のうち治療が強化されたのは37.4%に過ぎなかったのに対して、専門医の診察を受けた591人のうち治療が強化されたのは45.1%だったとの報告もある。