著者のコラム一覧
青島周一勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

精神的につらいと「がん死リスクが増加する」は本当か?

公開日: 更新日:

 落ち込みや不安など、精神的な苦痛は体の健康面にも悪影響を及ぼすといわれており、「心臓病脳卒中の発症リスクが増加する」という研究が過去に報告されているようです。また、精神的な苦痛は免疫系にも影響を及ぼし、体の抵抗力を弱めるとも指摘されています。免疫機能が低下すると風邪などの感染症を発症しやすくなったり、理論上はがんの発症リスクが高まることも考えられます。

 そんな中「英国医師会誌電子版」(2017年1月25日付)に、精神的な苦痛とがんによる死亡リスクを検討した研究論文が掲載されました。

 この研究は、英国で行われた16件の前向き観察研究から、16万3363人分の個人データを解析し、精神的苦痛を点数化した指標(0~12点で評価、点数が高いほど精神的苦痛が大きい)と、がんによる死亡との関連を調査したものです。

 なお、結果に影響を与えうる「年齢」「性別」「喫煙」などの要素で統計的に補正し解析しています。

 研究の結果、精神的苦痛の小さい人たち(0~6点)に比べて、精神的苦痛の大きい人(7~12点)では、あらゆるがんによる死亡が1.32倍、統計学的にも有意に多いという結果でした。がんの種類別の解析では、大腸がんによる死亡が1.84倍、前立腺がんによる死亡が2.42倍、すい臓がんによる死亡が2.76倍、食道がんによる死亡が2.59倍、血液のがんである白血病による死亡が2.59倍、統計学的にも有意に多くなっています。

 この結果はあくまで観察的な研究データに基づいているので、精神的な苦痛とがん死亡の直接的な因果関係を決定づけるものではありません。

 ただ、健康面に及ぼす精神的苦痛の影響は軽視できないように思います。

【連載】役に立つオモシロ医学論文

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸30億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」