リスクを下げる働きも「お酒」と「脳卒中」の不思議な関係
日本でその報告をしているのが多目的コホート研究「JPHC Study」だ。長期にわたる観察型の疫学研究であるこの研究は、全国12地域、14万人強を対象にしたもので、「飲酒」「食事」「喫煙」「運動」などの生活習慣が病気や生活の質にどのように影響するかを調べている。それによると、出血性脳梗塞の発症率と飲酒量との関係は右肩上がりの直線的な正の相関関係にあるものの、虚血性脳卒中の発症率と飲酒量の関係はJカーブ現象が見られた。お酒を飲まない人に比べて適度にお酒を飲んでいる人は虚血性脳卒中の発症率は低く、お酒を大量に飲んでいる人はその発症率は高かった。
「時折お酒を飲む人に比べて、エタノール換算で週に450グラム以上のお酒を飲む人はすべての脳卒中の発症率が68%増加していることが報告されました。特にくも膜下出血の発症率が著しく増加したのです。その一方で、週に149グラム以下のお酒を楽しむ人は、ほぼお酒を飲まない人に比べて虚血性脳卒中の発症率が39%も低く、ラクナ梗塞でより顕著だったのです」
その理由として適度な飲酒は、アルコールの作用で善玉コレステロールであるHDLコレステロールの血中濃度が上がること、血栓形成を促すタンパク質であるフィブリノゲンの値を低くして血液が固まりにくくなることなどが挙げられている。また、適度な飲酒は、血圧を一時的に下げる働きがある。