認知症在宅介護 子供の肉体的精神的負担を喜ぶ親はいない
「住み慣れた家で最期まで親の面倒を見たい」
子どもの多くはそう考えるかもしれない。だが、認知症を発症し徐々にその症状が進行すると、在宅介護を続ける子どもの思いも揺らぎはじめる。物忘れがひどくなる。料理や給湯などで危険性が増す。ひとりで身の回りのことができなくなる。円滑なコミュニケーションが難しくなるといったさまざまな不都合が生じ、その結果、子どもの心身への負担が増す。やがて、親に対する向き合い方も変わる。親の言動にまともに対応しなくなったり、無視しはじめたり、場合によっては感情を抑えきれずに暴言を吐いたりしてしまう。
いかに認知症が進んでいる親であっても、そうした子どもの言動を喜ぶはずがない。暴力を振るうのは論外だが、子どもが親によかれと思ってはじめた在宅介護が、お互いの不幸を招くことになる。そんな親子関係は悲しい。そのまま親が人生のフィナーレを迎えれば、子どもも悔いを残すことになる。
もちろん、在宅介護を続け、幸せな親子関係のフィナーレを迎えるケースもあるだろう。その可能性を否定するつもりはないが、そのためには親の症状、子どもの職業、家族の協力や経済的事情、地域の介護サービス事情など多くの要素が必要となる。