舌がんの切らない治療「選択的動注併用放射線療法」 体験したシェフに聞いた
舌を切っていませんから、治療中から会話の能力は全く変化なし。味覚は、最初は何を食べても味を感じない。そのうち塩味は戻ったが酸味や苦みはまだ……と段階を踏み、半年ほどで全ての味覚を取り戻しました。一つ一つの味覚を掘り下げて考察できたことで、治療前より味覚に鋭くなりましたね。がんの治療後、完全予約制のフランス料理店をオープンさせたのですが、以前作っていた料理より淡く繊細な味付けになったとお客さまから評価を得ています。
一連の経験を経て皆さんに伝えたいのは、がんと診断されたら、提示された治療法しかないと思わず、広い目線で望む治療を探してほしいということ。希望通りのものはないかもしれないが、近い形のものは得られるかもしれません。私自身、そうしたおかげで、現在があると考えています。
■選択的動注併用放射線療法
進行性の舌がんで行う選択的動注併用放射線療法は、全身抗がん剤、放射線、抗がん剤の動注療法を組み合わせて行う。
抗がん剤は通常経口、または静脈から投与するが、動注療法では、カテーテルを動脈に通してがんに直接投与。大半は大腿動脈からカテーテルを挿入するところを、30年以上前からこの治療を行う不破信和医師は、独自開発のマイクロカテーテルを用いて、耳の前の浅側頭動脈から挿入。
従来法では脳梗塞のリスクが2~4%あったが、それを起こりにくくした。