これまでの人生を振り返る…思い出の「棚おろし」のお手伝い
訪問診療をする中で、私たちにとって人生の先輩ともいえる患者さんやご家族の方々から貴重なお話を伺うことがあります。
90代や80代後半の方には、戦時中の記憶をはっきりとお持ちな方が少なくありません。診察の合間に当時の暮らしぶりやご苦労をいろいろと語ってくださる方もいて、大変貴重な経験になっています。その方は慢性心不全や糖尿病などを患う御年93歳になる女性の患者さんでした。
生まれは東京で、現在は都心部の大通り沿いに所有するお父さまから受け継いだ土地にテナントビルを建て、貸し出しながら息子夫婦と暮らしていらっしゃる方です。そんな土地への愛着から訪問診療を選ばれたとのこと。
この方の患う心不全とは、全身に血液を送る心臓の働きが弱くなって血液の循環がうまく行えなくなった状態のことです。その原因も心筋梗塞・弁膜症・高血圧症・慢性呼吸不全などさまざまです。そして、この心不全が急激に悪くなっていくのが急性心不全であり、それに対してゆっくりと心臓の働きが弱っていく状態を慢性心不全と呼んでいます。