そばに誰かがいることのありがたさ、その誰かをサポートする役割の大きさ
現在は他の患者さんと変わらず、当院の訪問診療で協力いただいている、訪問看護などの事業所の皆さんにもケアをお願いしている状況です。
「自分の子どもを家で看るようになってから、実際に家族が在宅医療を受ける立場になって、初めてその負担や苦しみを理解できるようになりましたし、それになによりも医療ケアの範囲を家庭にまで広げ、患者を中心に据えたケアを行うことができる、自分たちが行っている在宅医療の価値を改めて確認することもできました」
子どもの自宅療養を行いしばらくしてから、彼女は私にそんな感想を伝えてくれました。
その上で、医療ケア児が果たして障害が残らずに健やかに育っているかは、成長しなければわからないということも痛感したといいます。
すぐに結論や結果を急ぐ現代において、それに慣れてしまい、つい健やかに育ってほしいと思いながらも、本当にいま子どもにしていることが正しいことで、果たして子どものためになっているのかという答えが、日々の看護ではわかりづらく、最終的に子どもの成長を待たなければ自分のやったことがはっきりしないということにもどかしさを覚えると、そんなやりきれない気持ちも伝えてくれました。
いずれにしても、今はただ現代の医療の範囲でできることをするのみなのです。
冒頭の事件や女性スタッフの思いに触れ、「そばに誰かいる」ことのありがたさと、その誰かをサポートする在宅医療の役割の大きさを、改めて考えさせられたのでした。