いま死ぬことがすべての終わりではない
「普段はこの娘の背中でじっとしていて、何があってもじっとしていて、でも、この娘が困ったときに、悲しい時に、つらい時に、私を思い出してくれたらその時は私の出番だ。この娘が頑張って生きられるように、負けないように応援しよう。この娘が死んだ時、私には二度目の死がくる。その時には、私は永遠にいなくなっていい。そう考えたら、なんだかいま死ぬのが怖くなくなったようにも思ったのです」
そしてFさんは、娘さんに手紙を書いておこうと考えたといいます。
「私はあなたの中で、あなたの人生を邪魔しないように生きている。そして、あなたがつらくてどうしようもない時に、その時に私を思い出してくれたら私は応援する。あなたの心の中で一緒に生きている」
■生きている者の中に死者はいる
娘さんが字を読めるようになって、その時にこの手紙を読んでくれればいいという思いを話してくれました。
「愛は生死を超えるとはこのことだ。私の体は死んでもこの娘の中で生きるのだ。そう思ったら、ひとつの山を越えられたような、そんな気になりました。何か生きる希望が少し見えたようにも思いました。でも先生、おかしいよね! そんなバカなこと考えてとお思いでしょう?」