「仁者は憂えず」の書を見て自分は毎日憂えていると思った
テレビではザ・ドリフターズの故・志村けんさんがうちわのような太鼓を手に、「だいじょうぶだ~」「だいじょうぶだ~」と唱え回っていた頃のことです。病院の個室で、患者のお子さんがうちわを持ちながら、「だいじょうぶだ~」とふざけてベッドの周囲を回っていた光景を思い出します。
■治療がうまくいかないと…
ある時、がん性胸水がたくさんたまった患者が入院されました。胸腔にドレーンを入れて、陰圧にして数日で胸水を抜き切ります。ほとんど抜き切ったところで、ドレーンから抗がん剤を入れて、胸膜を癒着させ、胸水がたまらないようにします。胸水が抜け、肺が膨らんだ状態で胸膜内に抗がん剤を注入できると、胸水はたまらなくなるのです。ただ、肺が十分に膨らまず、胸膜がいびつに癒着して、胸水が再びたまることもありました。
治療がうまくいけば患者と一緒に心安らぐのですが、有効な薬剤が少なく他の部位への転移が起こり、厳しい状態になっていく方もおられます。予想以上のがんの進行は、患者にも私にも大きなストレスでした。