篠山紀信さんも坂田利夫さんに続き…27年間で8.3倍増の「老衰」とは穏やかな最期なのか?
毎年200人以上の自宅看取りを行う、「しろひげ在宅診療所」(東京都江戸川区)の山中光茂院長が言う。
「老衰のほぼ9割は世間のイメージ通りの『穏やかな死』です。ただし、老衰であっても苦しむ場合があります。それは自然死に向かう最期の段階で、それに逆らうかのような不必要な治療を施すケースです。具体的には『食べられないのはかわいそう』と、無理に食べさせて誤嚥性肺炎を引き起こす場合です。ほかにも、『せめて水だけでも……』と過剰に水分を取らせたり、不必要な点滴をしたりして心臓に負担をかけさせたり、腹水を増やしたり、痰がらみが続くなど、患者さんに余計な苦しみを負わせる場合があるのです」
穏やかな死とは「枯れるような死」をいう。実際、人は最期が近づくと、一見、意識状態が良好であっても、食べられなくなる。そこから、2週間から1カ月で看取りを迎えることが多いと山中院長は言う。
末期のがん患者の場合でも、抗がん剤などの副作用や激痛で食べられないケースを除くと、自然と食事と水分が取れなくなって徐々に意識が弱くなり、傾眠傾向が続いて最期の時を迎える。