やせる糖尿病薬「SGLT2阻害薬」の意外な副作用…多血症との関係
ところが、回復直後の健康診断では期待に反して意外な病名を告げられ精密検査を受けるよう強く勧められたという。
「『多血症』の疑いがあると診断されたそうです」
多血症とは血液中の赤血球の濃度が高くなる病気のこと。血液の粘性が高まることで血行の悪化を招き、脱力感、疲労感、頭痛、ふらつき、めまい、視界のゆがみなどの症状が現れる。赤ら顔、目や口の中の粘膜の充血などが見られることも多く、皮膚のかゆみのほか肝臓や脾臓が腫れることもある。
「多血症は進行すると血液が固まりやすくなるため、血管内に血栓ができて心筋梗塞や脳梗塞、肺塞栓症などの発症リスクが高くなります。多血症のタイプによってはごくまれにですが、白血病に進行することもあります」
なぜ、この男性は多血症の疑いを宣告されたのか? それは血液検査で赤血球の成分の数値が高かったからだ。
「血液の濃さを示す指標は『ヘモグロビン値(Hb)』と『ヘマトクリット(Ht)』があります。ヘモグロビンは赤血球の中にあるタンパク質の一種で、肺で酸素と結びつき全身に酸素を運ぶとともに不要になった二酸化炭素を肺に戻します。ヘモグロビン値は1デシリットル当たりの数値で成人男性は13.0~16.6グラム/デシリットル、成人女性は11.4~14.6グラム/デシリットルが正常とされます。ヘマトクリットは血液(へマト)100ミリリットル中に占める赤血球の割合の数値で、正常値は成人男性は40~50%、成人女性は35~45%です」