腎臓<下>なぜ運動は腎機能を改善するのか? 4つの腎臓体操

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 慢性腎臓病と診断されると、かつては「安静第一」と言われて運動制限が常識だった。しかし、その常識も近年、百八十度転換してきている。「運動療法」が推奨され、その重要性がクローズアップされているのだ。

 東北大学病院が開発し、世界各国で導入が進む「腎臓リハビリテーション(以下、腎臓リハビリ)」がある。運動・食事・薬物療法から、水分管理、教育や精神的サポートまで含む包括的プログラムで、その中心となるのは運動療法だ。

 実際、きちんと実行することで腎機能の指標「GFR値」が改善する症例が多数報告されている。

 では、なぜ運動をすると腎機能にいいのか。東北大学大学院医学系研究科・内部障害学分野の上月正博教授が言う。

「腎臓のろ過機能を担う糸球体という毛細血管の塊には『タコ足細胞』という細胞が張り付くように存在しています。この細胞は足を伸ばしたタコに似た形をしていて、それらの足が互いに絡み合ってフィルターとして働き、通常は分子の大きなタンパク質を通しません。ところが、タンパク質の取り過ぎや高血圧、高血糖などが続くと、糸球体の入り口の血管に過剰な圧がかかってタコ足細胞にも負担がかかり、糸球体から剥がれてしまうのです。するとフィルターの目が粗くなり、タンパク質などが尿中に流れ出て『タンパク尿』を引き起こすのです」

 それが運動することでどう変わるのか。

「適度な運動をすると、糸球体の出口の血管が広がることが分かっています。出口が広がれば圧も下がるので、糸球体にかかる負担が減り、タコ足細胞がしっかりと足を絡ませ合ってフィルターの役割を果たすことができます。糸球体出口の血管を広げる作用は、ACE阻害薬などの降圧剤にもあります。適度な運動は、まさに薬と同じような働きをするのです」

 さらに運動をすると筋肉や心臓で血流が増え、その刺激によって血管の内皮細胞からNO(一酸化窒素)が放出される。NOには血管を広げて血圧を下げる働きがあるので、より効果的に糸球体にかかる圧を下げ、腎臓を守ることができる。もうひとつ、適度な運動を習慣にすると、活性酸素を無害化する酵素(SOD)の働きがよくなる。活性酸素は免疫力の強化や感染の防止などに重要な役割を果たすが、増えすぎると糸球体の毛細血管を傷つけたり、腎臓の血流を妨げたりして腎臓に悪影響を与えるのだ。

「腎臓リハビリの運動療法で最も重要で推奨されるのは1日トータル20~60分のウオーキングを週3~5回行うことです。その運動の腎臓活性効果を高めるのに『腎臓体操』という簡単な室内軽運動もあります。併せて習慣にするといいでしょう」

 4種類ある腎臓体操のやり方はこうだ。

■かかとの上げ下ろし

①両手を腰に当て、両足を肩幅に開いて立つ。
②呼吸を止めないよう「ツー」と言いながら、5秒かけてかかとをゆっくり上げる。
③かかとを上げたところで息を吸い、呼吸を止めないよう「ツー」と言いながら、5秒かけてかかとを下げる。

これを5~10回繰り返して1セット。

■足上げ


①シッカリした椅子の背や手すりなどを体の右横に置き、右手でつかまって立つ。
②呼吸を止めないよう「ツー」と言いながら、5秒かけて左足を前にゆっくりと振り上げる。
③息を吸い、呼吸を止めないよう「ツー」と言いながら、5秒かけてゆっくりと膝を曲げ、太ももを持ち上げる。
④息を吸い、呼吸を止めないよう「ツー」と言いながら、曲げた足を5秒かけてゆっくり下ろし、後ろに振り上げる。
⑤最初の①の姿勢に戻る。
⑥右足も同様に行う。

①~⑤を3回ずつ繰り返して1セット。

■中腰までスクワット

①両手を腰に当てて両足を肩幅に開き、浅い中腰の姿勢で立つ。つま先は少し外側に向ける。
②呼吸を止めないよう「ツー」と言いながら、5秒かけて中腰まで腰を落とす。
③鼻から息を吸いながら、5秒かけて膝を伸ばし、①の姿勢に戻る。

①~③を3回繰り返して1セット。

■ばんざい

①両足を肩幅に開いて立ち、両手は太もものわきに添える。
②鼻からゆっくりと息を吸う。
③呼吸を止めないよう「ツー」と言いながら、5秒かけて両腕を「ばんざい」するように上げる。
④息を吸い、呼吸を止めないよう「ツー」と言いながら、5秒かけて両腕を元の位置に戻す。

②~④を3回繰り返して1セット。

 どの体操も1セット、1分で終わる。朝・昼・晩、1日3セットが目標だが、できなければ1日1セットでもOKだ。

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