長寿研究のいまを知る(11)やせる2型糖尿病薬と長寿との関係…抗がん剤より副作用が少ない
結果は、SGLT2阻害薬群の方が蓄積した老化細胞が減少し、肥満による内臓脂肪の炎症や糖代謝異常、インスリン抵抗性が改善するという、インスリン群には見られない特有の結果が得られた。つまり、SGLT2阻害薬には血糖改善とは別の作用があるということだ。
■カギは細胞内の燃料メーター「AMPK」
研究チームは、さらに細胞内の代謝によって作られた低分子化学物質を調べたところ、AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)を活性化するAICARと呼ばれる代謝物が増加したことがわかったという。
AMPKは細胞内でエネルギーが足りなくなると、それを察知してエネルギー産生に関わる酵素のスイッチをオンにする作用があり、燃料センサーとも呼ばれている。
さまざまな実験から、SGLT2阻害薬の老化細胞除去効果にはAMPKの活性化が重要で、とくに悪性度の高い老化細胞ではその発現レベルが上昇する免疫チェックポイント分子(PD-L1)の抑制が重要であり、それが老化細胞除去を促進することがわかっている。また、SGLT2阻害薬の投与は、高コレステロール血症によって形成された動脈硬化巣から老化細胞を除去することで、動脈硬化プラークの縮小を促進したという。